日本財団 図書館


 

熟である。阪神・淡路大震災時に、ボランタリー活動をしたいと全国から集って来たボランティアのほとんどが何の活動もさせてもらえなかったことは、「欧米のボランタリー団体等が保有しているようなボランタリー・リーダー(ほとんどが専門一専業スタッフ)が不在だった」(イギリス、ボランタリー・センター調査研究部長評)ことによる。
これからの社会においては、情報化、地方分権化、規制緩和等が進む一方で、人々の自己実現の追求も盛んになるため、人々はいわゆるヨコの繋がりが容易になり、様々な趣旨、目的の組織が生まれ易くなる。そして、その組織の目的が「他人の役に立つこと」であれば、ボランタリー組織(非営利団体)として活動し発展してゆくこととなる。わが国においても、ようやくNPO法(市民活動促進法)が誕生するが、これも社会発展の証であろう。これまで、わが国の非営利団体は主として行政の側面支援者として公益法人認可を受け、政府や自治体の外郭団体と称され活動しているのが定型であり、欧米社会からは理解しがたい特異な状況であった。欧米社会においては、社会を構成するセクターとは、政府、自治体等公的(パブリック)セクター、企業等営利(プライベート)セクター、非営利(ボランタリー)セクターの三つのセクターであり、それぞれの発展努力によって社会の進展が図られると考えられている。
しかし、今後においては、福祉財政とくに人口構造による次世代負担の限度、あるいは地域社会の持つ人的社会的資源によって制約される条件等を考慮に入れれば、行政が用意できる財源や資源のみでは、高齢者介護サービス等の維持向上が難しい状況になる場合もありうる。欧米ではこうした場合にボランタリー・セクターが大きな役割を果たしている。1980年代以降のイギリスはこうした状況に対応して、行政の限られた予算で、行政に替って(行政からの委託で)ボランタリー団体がナーシングホームの運営など多方面での高齢者福祉サービスを行うようになっている。しかも、ボランタリー団体はサービスの質を下げず、むしろ新しいサービスすら提供している。それはボランタリー団体が持つ、募金活動(チャリティー)と事業協力者となるボランティアによるものである。イギリス社会ではボランタリー団体は社会福祉事業のまさにクッション的役割も担っている。とくに、近年は環境保全に関するイギリス等北欧先進国のボランタリー活動が国内外を問わず活発であり、イギリスなどではいかなる類のボランティアにもその要望に適応したボランタリー活動が用意できると言われている各種多様なボランタリー団体がある。
わが国においても、イギリス等のボランタリー・セクターの社会的役割や組織運営の手法について積極的に志向する人々が増えており、税制上の改革も併せてNPO法の進展も期待されている。

 

 

 

前ページ   目次へ   次ページ

 






日本財団図書館は、日本財団が運営しています。

  • 日本財団 THE NIPPON FOUNDATION